みなみ「この仕事、好きかって言われたら……うーん、分かんないかもしれません」

お昼どき、みなみちゃんがぽつりとつぶやいた。
デスクの片隅に、食べかけのサンドイッチとぬるくなったカフェラテ。手元のタスク一覧にカーソルが点滅している。


ニシ「それ、わかるなー」
ニシオカが、となりでプリン片手にうなずいた。

ニシ「なんやろ、好きって言うほど“のめり込んでる”感じでもないし、嫌いじゃないけど……って。」

イタ「それでも、みなみちゃん、朝早く来てメールチェックしてたやんか」

みなみ「……そうですね。でも、なんとなく習慣になってるだけかも」

AIちゃんが机にちょこんと座って、こんなふうに言った。

AIちゃん「“熱量”って、“好き”って気持ちを外から見たときの姿なのよ。“本人は自覚してない”けど、傍から見たら“この人、夢中になってる”って感じる。それが“熱”になるの。」

みなみ「じゃあ、自覚はなくても、“熱い”ことってあるってことですか?」

ニシ「あるある。むしろ、“本人が気づいてない熱さ”って、周りにとっては一番刺さることあるよ」

その時、窓の外から重たい“気配”が差し込んできた。

ズズズ……と音がしたかと思うと、またもやユウの影。
今回も、いつものようにビルの窓越しに、そっと顔をのぞかせた。

ユウ「……“熱量”とは、語られることで、かたちになる」

AIちゃん「きた……ユウ語録……」
AIちゃんがうっすら笑う。

ユウ「本人の中だけにある“好き”は、誰にも伝わらない。でも、“なんか好きそうやな”って周りに感じてもらうことで、そこに“語られる意味”が生まれる」

イタルが腕を組んで、納得したようにうなずく。

イタ「それ、たぶん、PRの役割なんやろな。本人が言葉にできへん“好き”を、ちょっとずつ言葉にして、外に伝えること。」

ニシ「その役割、みなみちゃん向いてるかもよ」
ニシオカがそう言うと、みなみちゃんはちょっと驚いた顔をした。

みなみ「え、私が?」

ニシ「うん。“自分ではそんなに好きじゃないですけど……”って言いながら、めっちゃ頑張ってる人の“熱”って、じわじわ伝わるねん。」

みなみ「……それって、うれしいですね」

窓の外では、ユウがふっと、少しだけ口角を上げたように見えた。
その背後には、あまりに大きく、静かな空が広がっていた。

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“熱量”とは、語られることで、かたちになる

▶第25話「その人の存在が、会社を語ってる?」

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 ※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。