みなみ「……クレームって、やっぱりネガティブなものなんでしょうか?」

朝の定例ミーティング。

みなみちゃんが、ホットアイマスクをつけたまま、ややこもった声でそう呟いた。


AIちゃん「いや、目は隠さんといて」
AIちゃんがすかさずツッコむ。

イタ「いやでもな、それはええ問いやで」
イタルが、ぽんと湯呑みを置いて話しはじめた。

イタ「ぼくが若い頃は、“クレーム即・謝罪”が鉄則やったんよ。言い訳せず、まずは頭下げろ、ってな。でも最近は、クレームって“対話の入口”っていう見方が増えてきとる。」

みなみ「対話……ですか?」

イタ「うん。怒ってるってことは、まだこっちに期待しとるってことやからな。」

ニシ「それめっちゃわかる」
ニシオカが相づちを打つ。

ニシ「A社の担当、初めはメールでボロクソ言うてきたけど、電話で“うちの提案が足りてなかったかもしれません”って言ったら、次の週には笑ってくれてな。逆に今じゃ、社内の別部署まで紹介してくれてる。」

みなみ「つまり、“きっかけ”にはなるわけですね……」

イタ「そう。でもな、ここが難しいとこなんやけど……“対話”にできるかどうかは、対応した人の“温度”で決まるんよ。」

そのとき、会議室の窓の向こうに、巨大な影がゆっくりと通った。

AIちゃん「……あれ?なんか、でっかい……」

窓を開けると、そこにはユウがいた。
ビルの3階の窓と同じ高さで、巨大な体をかがめて、にこりともせず、ただ一言。

ユウ「クレームは、信頼の裏返しです。」

ニシ「でたー!ユウ語録……!」
とニシオカが目を見開く。

イタ「いやでも、たしかにそのとおりやな。期待を裏切ったから怒る。でも、そもそも期待されてなかったら、何も言われへん。」


みなみ「じゃあ、クレームは“もう一度信じたい”っていうサインかもですね」

ユウは、黙って小さく頷くと、ビルの影に隠れて見えなくなった。

AIちゃん「……さすがに存在がデカすぎて、内容が頭に入ってこない」

それでも、みんなの胸には、確かに残った。


「“怒り”の中に、“信頼”の種がある。」

そんなふうに思えるとき、PRは、ただの広告でも、炎上避けでもなくなる。

それはきっと、“関係性の修復を試みる技術”なのだ。

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「“怒り”の中に、“信頼”の種がある。」

▶第23話「社内恋愛はPRの敵ですか?」

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 ※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。