第15話「“伝えるのが苦手”って、悪いことですか?」

みなみちゃんは、芝生の上にそっと座った。
犬は落ち着いた様子で横に伏せているが、彼女の背筋はまだ固い。
みなみ「……す、すみません。いきなり来てしまって」
イタ「ええよ、うちら基本、のんびりしてるからな」
みなみ「ここ、PR研究会って聞いて……でも、わたし、PRとかよくわからなくて……」
みなみちゃんの声は小さく震えていた。
ニシ「うちらも最初は“なんやそれ”から始まってるで」
ニシオカが柔らかく返す。
AIちゃん「じゃあ、ちょっと聞いてもいい?みなみちゃん、“伝えるのが苦手”って感じてるんだよね?」
みなみ「はい……小さい頃から、人にうまく話すのが苦手で……伝えたいことがあるのに、言葉にしようとすると頭が真っ白になっちゃうんです……」
AIちゃん「それって、すごく“伝えたい気持ち”が強いからじゃない?」
みなみ「え……」
AIちゃん「“伝えたい”が弱い人は、たぶんそんなに悩まない。言葉が詰まるのは、相手にちゃんと届いてほしいって、本気で思ってる証拠」
みなみちゃんは、一瞬ぽかんとしたあと、少しだけ表情を和らげた。
みなみ「でも、PRって、うまく話せる人がやる仕事じゃないんですか?」
イタ「うまく話すより、大事なんは“うまく聴く”ことかもしれへん」
みなみ「……聴く?」
イタ「うん。相手の気持ちを受け取って、ほんまに必要なことを考える。それって、うまく話すより、ずっとむずかしい。でも、みなみちゃん、もうできてる気がする」
みなみ「え……そんな……」
ニシ「焦らんでええよ。ちょっとずつ、一緒に考えていこ」
風が吹いた。
みなみちゃんは犬の頭をそっとなでながら、小さくうなずいた。

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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。