第14話「そもそも“伝える”ってどういうことですか?」

イタ「なあ、AIちゃん。“伝える”って、どういうことなんやろな?」
イタルが芝生の上で体育座りしながら、土に枝でゆっくり線を引いていた。
ニシ「また哲学モードや……」
ニシオカが苦笑しつつ、コーヒーをひと口飲んだ。
イタ「ちゃんと話したつもりでも、伝わってなかったりすると、もやもやするやん」
ニシ「うん、それ、あるわ」
イタ「“それ、そういう意味ちゃうねんけどな〜”っていうズレ。なんで伝わらんのやろって、悩むやつ」
AIちゃんはしゃがみこんで、クローバーをいじりながら答えた。
AIちゃん「“伝える”って、“自分の言葉を相手にコピーする”んじゃなくて、“相手の中に世界をつくること”。だからズレが出るのは、ある意味当然」
イタ「せやけど、ズレたままやと不安にもなるんよな」
そのとき、後ろから声がした。
???「……す、すいません。あの……ここって、“PR研究会”って聞いたんですけど……」
三人が振り返ると、Tシャツに黒パンツ姿の女の子が立っていた。茶髪のボブヘアに、黒縁メガネ。大きなハスキー犬が彼女の隣に座っていて、リードを握る手が少し震えている。
イタ「あ……この前、犬に引っ張られてた子やんな?」
???「えっ!?見られてました!?あの、すみません……」
彼女はお辞儀しながら、メガネを押さえた。
ニシ「名前は……?」
みなみ「みなみです。今日からカスタマーサポートに配属されて。で、先輩に“PRに興味あるなら行っとき”って言われて……」
イタルが隣の芝をぽんぽんと叩いた。
イタ「そっか。じゃあまずは一緒に座ってみよか。犬もいっしょに」
みなみちゃんはおそるおそる腰を下ろし、犬もその横で伏せた。
みなみ「……わたし、人にうまく伝えるのが、昔から苦手で……でも、ちゃんと伝えられるようになりたくて……ここに来ました」
AIちゃんが、ふっと笑って言った。
AIちゃん「ようこそ。“伝えるのに悩んでる人たちの集まり”へ」
風が吹き、クローバーの葉が揺れた。

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※この物語は概ねフィクションです。実在の人物や組織と関係のある話題もたまにありますが、実際には関係のない話が多分に含まれております。